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渡良瀬川満歩(X)完結編 
     ===松木川から皇海山===

山行日
    2004年9月15(晴れ一時雨),16日(曇り後晴れ)   単独

コース
    銅親水公園→(林道、松木川)→国境平→皇海山→鋸山→六林班峠→庚申山荘(泊)
    →一の鳥居→銀山平→(舟石林道)→赤倉→銅親水公園

 渡良瀬川は群馬・栃木県境にある皇海山(標高2143.6m)に源を発し、茨城県古河市付近で利根川と合流する、流路延長106.7kmの利根川水系最大の支川である。4回に分けて、利根川の合流点から、栃木県足尾町の北部、足尾砂防ダム銅親水公園まで歩いた。ここで、久蔵川、松木川、仁田元川の3川が合流する。この時、親水公園の駐車場で松木川遡行の準備をしていた5人のパーティーから聞いた話、「渡渉しながら最後は本流でなく右の沢に入れば危険箇所はない、・・・・」が、今回の渡良瀬満歩(X)のきっかけとなった。30年ほど前の話だが、松木川の上流を、水の冷たい6月頃、目指したことがあった。当時は、車で林道の終点(今回の渡渉地点)まで入り、河原に下りられた。渡渉を避けるべく歩き出したが、30分ほど歩いて、岩場でスリップして深みに落ち、ズブ濡れになって引き返したことがあり、松木川に拒絶反応があったが。それが、あの一言で吹っ切れたのである。男は度胸、消化不良を起さない程度の情報を集め、昭文社の山地図と地形図、短パン&ウエイディングシューズ、万一の場合のビバークの準備をして、銅親水公園を5:05出発する。

 現在の地形図では、大ナギ沢の少し先の林道の終点までは、親水公園から4.2kmほどである。久蔵川を渡り、松木村跡の植林地帯を通過し、大ナギ沢に到着する頃には、ジャンダルムと称する右岸の岩山には日が指し、行く手を拒むかのように見えた、大ナギ沢6:17。松木沢の1/3程度の水量が、大ナギ沢から合流しているようである。ここから旧林道に沿って歩くが、崩壊がひどく、所々で大きな落石の間を進んだり、河原を歩いたりする。6:40、旧林道が終わり広い河原に出て5分ほどで右手に岩の張出した所で、渡渉を余儀なくされ準備にかかる。林道の終点から概略2.6km地点である。短パンにウエイディングシューズ、登山靴はザックに縛り付け、朝食をとって、7:00冷たい水に足を入れ右岸へ。
  
 朝日に映えるジャンダルム              落石の間を歩く(踏み跡明瞭、破壊されたガードレールの連続)


 ジャンダルムを広角で

  
 向かう、松木川上流方向                右岸の滝

  
 岩場にかつて緑だった証しの立ち枯れした木々   川沿いには、フジアザミが点々と

  
 4段?の堰堤の向こうから渡渉がはじまる       渡渉地点、立っている棒が印かも

 短パンとウエイディングシューズは、幌尻岳に1998年に歩いた時使用したものである。この時も渡渉を避けるべく、新冠川のコ−スの長い林道をMTBでと思い準備したが、室蘭のN氏から山行レポートとアドバイスを頂き、額平川渡渉に踏み切った、思い出の品物だ。靴は山グッズ店で購入したものだが、短パンは作業ズボンを超ミニにしたもの。右岸に渡渉するとすぐ大きな堰堤が視界に入る、松木川最上流の六号ダムである。右手(左岸)に階段があり、ロープと取っ手に掴まって乗越えると、広々した河原に降りる。7:13。間もなく左岸から、三沢と滝のある小足沢が合流する、最初の渡渉地点から三沢のの合流点まで700m位だろうか。大きな岩が点々と立ちはだかるが、早めに渡渉して安全を確保する。この辺から右岸は緑豊かな樹林帯となり、7:28、右岸の張出した所で、中央に皇海山が目に入る。V字の沢に、青い鋭角な山頂部、真っ青な空、ここまで歩いて来た感動の瞬間である。
  
 松木川最上流の堰堤                 ダムに埋め込まれた名板

  
 小足沢の合流点                     突然皇海山の山頂部がV字の谷に

 三沢から2km弱の所で、左岸に落ちる細い滝状の流れに出る。すると左岸に写真のようなペイントマークがあり、赤いテープが数ヶ所見えた。ここをニゴリ沢と間違え、ここから尾根に取り付く、7:50。長ズボンと山靴に換え、沢の右岸を登る、最初の5分ほどは急登するが、緩やかになり、広々とした斜面に変わる。ここで間違えに気付いたが、地形図を見ると入り込んだ地点から予定したニゴリ沢まであまり距離はなく、左にトラバース気味に高度を上げていけば、いずれ予定したルートに出られると、このまま進んだ。そこは、鹿の牧場のようなところで、その数たるや数十頭は見た。しばらく進んだところで、沢に出た。これがニゴリ沢だろう、二つ目のミステーク、あとで気付いたがニゴリ沢の枝沢のようである。更に踏み跡を探しながら登っていくと左手から沢の音、ここで二つ目の間違いに気付く。まもなく踏み跡らしき道に出ると、南の視界がが開け、皇海山の雄姿を見た。多分、モミジ尾根の1490m地点と思う、確証はないが。
  
 ニゴリ沢と間違えた沢                 そこにこんなペイントマークが

 そこから間もなく、真っ直ぐ稜線を進む道と、南側をトラバースする道に分かれた。獣道との判別は難しく、下の道を進むと、小さな沢に出た。先方25mほどに動く黒い物体を発見、70,80cmほどの小熊であった。刺激しないように見守った、低い笹の斜面をピョコピョコ跳びながら逃げていった。その格好は動くぬいぐるみ、可愛いものだった。自然界で熊に会ったのは初めてだ、これも感動したね、多分近くで母熊が見ていたと思うが、恐さは感じなかった。低い笹の密生する急斜面を尾根の薄い所を目指して進む、一汗かくと素晴らしい眺望の待ち受ける、白砂台地から東に延びる小さい尾根に出た、9:30小休止。皇海山、鋸山、北方向に1695P、東に延びるシゲト山、黒桧岳、大平山方面の山々、渡良瀬川の奥にこれほど深い山があるとは、実感した。
  
 モミジ尾根の1490m地点から見た皇海山      白砂台地の東の尾根から皇海山

  
 同、白砂台地の北の岩山、1695P?         同、シゲト山、黒桧岳、大平山方面

  
 同、皇海山                         同、鋸山(左)&皇海山{右)

 休憩地点から岩場のヤセオネを進み、白砂台地の付け根で道が崩壊して通れず、真っ直ぐも、下のガレ場も。ここまで来て引き返し?、大きく迂回も覚悟して先ほどの休憩地点との中ほどまで戻ると、巻き道らしき踏み跡があった。ガレ場の下を無事通過、ガレ場をしばし眺める、巻いて良かったと、10:00。わずかに登って白砂台地、ちょっと南に下ると、予定していた国境平に出た、10:10。国境平は標高で1620mそこそこの白い砂地の出た平坦な所である。シラビソが点々と生え、東には辿ってきた松木川が遥か下の方に望むことができた、やっと着いた、ここまで親水公園から4時間5分を要した。コースタイムは6時間、状況から安全を見ての設定と思うが、重なるトラブルがあったにしては上出来である。山に入ってからの距離は長かったが、急登は避けられてしまった感じである。

 国境平から踏み跡を辿り、しばらく南方向に進むと錫ケ岳が大きく北方向に横たわる。左から三ケ峰2032m、笠ケ岳2246m、錫ケ岳2388mであろう。ズッシリした構えである、北から見た感じと大分異なるものだ、10:38。
  
 白砂台地との付け根、右鞍部崩壊、ガレ場も渡れず  少し戻って岩峰の下を巻きガレ場を撮る

  
 白砂台地から少し下って国境平に出る          同、付近

  
 国境平から白砂台地                   国境平から南の向かう尾根

  
 国境平から少し進んだ所から北方向を撮る       同、松木川方面

  
 稜線にはこのような目印が多い            稜線から上州武尊山

  
 稜線から錫ケ岳                     国境平付近の皇海山道標

 ここから少し下り直に小さく上り返してまた下り、笹原に出る、ここが皇海山との鞍部だろう、標高でおよそ1620m地点である、10:53。これから山頂まで、一気に520mほど登る。はじめは緩やかに笹に埋もれた道を登り、コメツガの樹林帯に入ると勾配を急速に増す、ここで一休みして昼食とする、11:12。コメツガにつけられた目印のマークを追いながら、苔むした樹床をジグザグ進む。汗を拭きながら、振向けば樹間から錫ケ岳と日光白根山を北の方向に、真中一段下がって宿堂坊山1968mが重なる。昼飯食べて、奮闘46分、やっとシャクナゲの尾根に辿り付く、11:58。
  
 皇海山との鞍部付近、国境平の道標        鞍部からガスのかかりはじめた皇海山

  
 錫ケ岳と日光白根山遠望、中央が宿堂坊山と思う  皇海山直下のシャクナゲの道

これからが長かった、勾配は若干緩くなったが、山頂にはガスがかかり見通せない、5分ほど歩いては腰を下ろし、呼吸を整えてまた歩く。3,4回繰り返し、12:21、皇海山山頂に辿りつく。この瞬間、渡良瀬川を遡り、松木川は途中から尾根歩きとなったが、2年越しの計画が実現したわけである。山頂に立つ、渡良瀬川水源碑を前にして、皇海山という山の遠き道と緑の豊かさを実感した。山頂から流れ落ちる一滴の水、草木に潤いを与え、生きとし生ける物を育み、長い地球の歴史を刻んできた。時には荒れ狂い、大地を押し流し、恐れる万物に猛威を与え、自然の尊さを思い知らせる。・・・・と思いにふけり山頂をあとにする、12:45。
  
 皇海山山頂                         皇海山山頂

 ここからは、数回歩いたルートなので、感覚的に楽だ。ちょっと下った所に、青銅の剣、“庚申二柱大神”と読めるが、どういう意味があるのだろう、書き留めてあとで調べてみよう。間もなく、山頂に向かう夫婦と単独行に会う、いずれも簡単に往復できる利根村の皇海橋から歩いてきたといっていた。皇海山も私がはじめて登った時は、西からのルートはなく、庚申山から、あるいは六林班峠から鋸山を越えて来た。道も笹が背丈ほど生え、獣道と区別がつかずあえぎながら最後の急坂に挑んだものだった。山頂付近はシラビソの樹林帯で眺望は全く利かず、三角点を踏んで、銅剣と白根山への道標を見て帰った。深田久弥の“日本百名山”は出回っていただろうが、全然知らなかった。ただ山名に響きがあり、無知なことだが、もしかしたら横文字(sky)?、なんてスカイライン全盛の時代のこと、そう思うのも不思議ではなかった。利根村皇海山登山口への分岐13:12、鋸山山頂1998m着13:50、ガスで視界不良となる。
  
青銅の剣、“庚申二柱大神”              ガスが漂ってきた、道標が霞む

  
 シラビソの樹林帯、大分透けてしまった      利根村皇海山登山口への分岐

  
 鋸山山頂部、直下から                鋸山山頂1998m

 3,4ヶ所小さいピークを越え、徐々に高度を下げて行く、六林班峠に近いところで小高いピーク女山1836mを通過し、林班峠へ14:38着。ここで雨宿りと小休止して、ナガーいトラバースに入る。最初の沢14:53、水を補給する、二つ目の沢を渡り、叩いて渡りたいような木の橋を渡り、同じ様な光景を目のあたりにしながら10ヶ所プラスの沢を渡り、16:55庚申荘着、疲れた。先客が一人就寝中、早飯を食べて、5:30には布団の中。
  
 雨がシトシト・・・・                      色付いたナナカマドが目の保養に

  
 女山1836m                        霧の中の六林班峠

  
 見事なコメツガの樹林帯                 これも、お見事、シラカバ林

 隣りのゴソゴソした音で目を覚ます、なんと11時間熟睡してしまった、5:05庚申荘をあとにする。曇っていて、薄暗い登山道、赤い紐で一の鳥居方面の通行を止めているようだった。50mほど歩くとまた、赤い紐が、猿田彦神社跡でもう一箇所、通って見た感じでは危険箇所もないし、意味不明。ジャンジャン下る、鏡岩5:30、鹿の鳴声、水面沢の音に深山幽谷を感じる。これから向かう人達五人に会う、、水面沢にかかる橋を3回渡り、一の鳥居着5:48。庚申川に沿った林道を歩いて、車を2台見る、奥の遮断機(開放)の所で6:18。舗装道路を歩いて、銀山平奥の遮断機6:38着、ゲートはと閉じていた、何故奥に車が?

 ここでザック&山靴をデボして、ウエイディングシューズを履いて舟石林道を歩く。備前楯山登山口7:14、ノコンギク、ハギ、ススキが咲く林道を下る。備前楯山には、まだ雲がかかっている、もうじき晴れるだろう。子連れの野猿に驚かれながら本山へ、渡良瀬川にかかる古川橋を渡る7:58。古川橋は、明治23年に完成した日本で一番古い道路用鉄橋である、と案内板にあった。
  
 舟石林道の地層、昔の沼だった所          ノコンギク

  
 ハギ                            備前楯山登山口

  
  備前楯山にはまだ雲が・・                  古川橋

 赤倉の中心街に入り、渡良瀬川右岸に旧鉱山あとを見る、錆ついた剥き出しの鉄骨に、赤いきれいな洋館が似合う光景だ。いかにも不思議である、不要になったものと残されたもの、足尾の町の歴史なのでしょう、うまくこのままの姿で保存して欲しいものだ。 昨日から松木川を遡り、皇海山を越えてグルッと一回り渡良瀬源流を巡る山行は親水公園で終わった、8:20。
  
 旧鉱山あと、きれいな洋館は使用中でしょう     親水公園は目の前

  
砂防ダムから落ちる清き渡良瀬の流れ、大地を潤し万物を育む  久蔵川、松木川、仁田元川の3川の合流点

 所要時間は、一日目11時間50分、二日目3時間5分、合計所要時間は15時間5分であった。5回にわたる渡良瀬川満歩も、多少不満足の点も残ったが、これで一応完結とする。下流では河川の使われ方が気になったし、上流へ遡るに従って“水”そのものに深い関心をもった。生意気のようだが、兎角言われる自然の大切さ、これは直に接することにより、真の意味の理解が深めるのではなかろうか。講釈もほどほどに、実践できるフィールドを身近な教育の場に、これは一言余計だったかな。
  参考:川下から   4日目  1日目  2日目  3日目
       
       渡良瀬遊水地 (渡良瀬遊水地公式HP)   渡良瀬川 (国土交通省渡良瀬川河川事務所)



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