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白馬三(白馬岳・杓子岳・鑓ガ岳)縦走

山行日 
      2000/10/7−10/8 小蓮華山まで2人、あとは単独

コース 
      蓮華温泉→白馬大池→小蓮華山→白馬岳(テント泊)→杓子岳→鑓ガ岳→鑓温泉→猿倉

 1999年6月の末、梅雨の合間の晴れ渡った日に、Yさんと猿倉から大雪渓を歩き山頂を日帰り往復し白馬岳の一面を覗いた。その年の秋に鬼無里村から白馬村へ入り小さなトンネルを抜けた所から、紅に染まった山並みの向こうにそびえ立つ後立山連峰に魅了され、猿倉の手前の紅葉の残る中山沢を散策してこれまた違う顔を見た、更に蓮華温泉の手前のヒワ平からすっかり冬景色となった、小蓮華山、白馬岳、旭岳、雪倉岳を身近に眺めた。あれから1年、蓮華温泉までの道が開いているうちに白馬三山を歩こうと出かけた。


 夜明けを待って妻と蓮華温泉を5:30に立った。霜で真っ白になった草の葉に触れるとパリパリと音を立てていた、ジグザグの急登がはじまる、露天風呂の在処を眺めながら、妻は「入りたいなあ」とつぶやく。2時間弱歩いただろうか、標高約2000m天狗の庭という樹林帯が一旦途切れ、風雪に歪んだカラマツが点在する視界の開けた岩場にたどり着いた。小蓮華山、雪倉岳を眺めながら小休止、さわやかな風にみるみる汗は引いていく。ここから少し登ると緩やかな勾配となり、樹間に雪倉岳の尾根筋を見ながら、最後に一踏ん張りすると白馬大池に着く。さざ波の立つ水面に半円形の乗鞍岳を写し、ところどころに残るナナカマドの紅葉は青い空と山の緑、黒い岩肌に映えていた。人影もなく静寂の中で小屋の発電機の音が異様に時々耳を刺した。小蓮華山へと雷鳥坂を歩く、真っ赤なウラシマツツジが目に入った、よく見ると葉脈が白く透き通り、黒斑が盛り上がり、縁のギザが白く光って見える、単純な赤ではなく不思議な綺麗さだ。先ほど休んだ大池も、緑の森にぽっかりとコバルト色の平面を造っている。遠く雲に霞んだ山が見えるが雨飾山、焼山、火打山方面だろうか。
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     白馬大池              白馬大池南方              ウラシマツツジ             白馬大池


 左に立ち昇るガスを、右に朝日岳方向に連なる稜線を、お茶代わりにゆっくり、のんびりと足を運び、小蓮華山へ11時ちょっと過ぎに着いた。ちょっと早い昼食をとった、妻はここで引き返し蓮華温泉かどこかの温泉に宿泊して、明日正午過ぎに猿倉で合流することにした。先日村営小屋へ電話で問合せたら、10cmほど雪が降ったと言っていたので、安全を見てピッケルを持ってきたが、尾根筋には雪は全くないので、妻のストックと交換して別れた。
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   小蓮華山付近          小蓮華山から白馬岳


 正面に時々見せる雲間の白馬岳を見ながら、緩やかな稜線を30分ほど歩く、右手の鉢ガ岳に少し接近しているような気がした、その向こうに富山湾が、そして能登半島がぼんやりと見えてきた、三国境だ、山頂はもう一息だ、小休止する。ここからは、北西方向の鉢ガ岳がハイマツの緑と白い山肌できれいだ、険しい白馬の東斜面に比べたら丸っこく、いかにも女性的だ、その左手には浅く透きとった小さな湖、長池が見える、まだ溶け残った雪がトンネル状に残っている。12:30最後の登りにかかる。
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  三国境、雪倉岳分岐       三国境より雪倉岳方面    三国境付近より白馬岳


 しばらく急登が続く、15分ほど歩いたところで65歳+αの人に会う、意外に軽装だがきついらしい、ゆっくり行くから先にどうぞ、と言われた。小蓮華方向を時々振り向きながら、変わっていく情景を眺め一人満足感を味わう。13:40山頂着、2組3人がくつろいでいた。東から南方向にかけては雲がかかっていたが、上空は抜けるような青空だ、ザックを背負ったまま、ドカンと道標近くに横たわる、気持ちがいい。南西方向に大汝山から剱岳にかけての稜線が白いふんわりした雲の上に浮かんで見える、その右手前には旭岳から清水岳にかけての黒と茶色の山体、南方向は明日向かう杓子岳・鑓ガ岳そして唐松岳・五竜岳・鹿島槍ケ岳の山塊が一望できる、2932mからの眺望である。20分程南に下って14:40村営頂上宿舎のテント場着、5張ほど先客あり。
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白馬岳山頂より剱岳          白馬岳山頂より旭岳       白馬岳山頂より鹿島槍方面  白馬岳山頂より大汝山〜剱岳のアップ



 6:30灰色がかった上空を見上げながら2日目のスタートだ。今日は薄曇りというところかな、ガンバロー、自分に言い聞かせる。少し下って登り返すと丸山2768mに着く、半島の突端みたいなところだ、振り返ると空に突き出た山頂の斜面にどでかい山荘がやっとへばりついているように見えた。杓子岳、鑓ガ岳は目の前といった感じ。道は鞍部まで急坂を下りまた登り返すと杓子岳山頂である。変わりゆく景色を見ながらの空中散歩といったところである、山並みを頻繁にカメラにおさめたくなる、一人で眺めているのはもったいない。
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白馬岳より杓子岳、白馬鑓ケ岳   丸山付近から白馬岳山頂     丸山付近から頸城山塊



 上空の雲は気になるが、遠望は結構楽しめる、南東の方向に秩父山系、美ヶ原と八ヶ岳の間に富士山、そして南アルプスまでが見えている、美ヶ原は上部が真っ平らで巨大タンカーみたいだ、八ヶ岳は5つの山頂部が見えるが一つ一つは分からない、富士山まではここから直線距離で200km弱はあると思うがはっきり見えている、7,8合目まで雪化粧だ。先客の夫婦にシャッターを頼まれる、私は道標だけを写真の区分に撮る、あとは鈍った脳裏に焼き付けて鑓ガ岳の向かう。この杓子だけには巻道があって、ここを利用している人が意外に多い、三分の一くらいいそうだ、わずか100m足らずの登りだから踏ん張ってもらいたい、真ん中を務める杓子岳にかわいそうだ。そんなことを考えながら急坂を折り返す、杓子沢のコルから鑓ガ岳を見上げるとこれが200mはある、ここを意識して巻道を行くのかと勝手に想像する。鑓ガ岳山頂へ8:30に着く、切り立った白馬の東斜面が手に取るように分かるところだ、すごい断崖だ、杓子尾根の向こうから小蓮華の方まで続いている。茶系の山肌と黒い断崖、ところどころにハイマツの緑、突き出た白馬山頂部があり、南北に長く連なった稜線がここの山体の特長である。
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杓子岳山頂より鹿島槍ケ岳      鑓ケ岳より白馬岳            鑓ケ岳より白馬岳               鑓ケ岳山頂


 この山行も登りはこれまでで、地図で見ると鑓ガ岳から杓子沢まで標高差900mを一気に下っている。山靴を点検して大出原分岐までまず、200mを慎重に下る。五竜、鹿島槍が霞んではいるが迫ってきた、その右手には立山連峰が薄青く見える。間もなく大出原の分岐点に着く、下りは早い。
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鑓ケ岳大出原分岐間から南方稜線                       大出原分岐


 大出原は初夏の花畑がいいらしい、山紀行の映像を見たことがある、今回は晩秋というところだがどうだろう、胸をふくるませて大出原へと下る。チングルマが、岩石で風をよけるようにして群落を作り、葉が真っ赤に紅葉している、綿毛が下から吹き上げる風に揺らいでいた。一帯の斜面は白っぽく、遠くからは全て残雪に見えた、その白色と草紅葉の茶色がチングルマの赤色を引き立てているのは不思議だ、まさに自然の調和である。さらに下るとナナカマドの群落が層をなしていた、荒れ地に草が根付き、低木が生育し、更にナナカマドのような大きな木へと営みを変えていくのだろう。間もなく、下界の見渡せる場所に出た、針葉樹と色とりどりの紅葉の下に白馬の村が、そして貫く姫川の向こうに、頸城山塊がたなびく雲の合間に薄青い稜線をにじませている。
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  大出原付近にて            大出原付近にて           大出原付近にて               大出原付近にて



 分岐から2時間ほどで鑓温泉についた。小屋はすっかり冬支度を終え、たたまれていたが、主の好意と思うが温泉は開放されていた。ほとんど同時に5,6人着いたので誰とはなしに上は女性、下は野郎と言うことで決まった。ちょっと熱めであったが、兎に角いい湯だった、わずかに白濁している、泉質が疲れには最高だ、景色もいい、見上げれば大出原の錦絵、正面は頸城山塊、見下ろせば登山道が緩やかに蛇行し山肌に見え隠れしている。
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  鑓温泉と頸城山塊
 (写ってしまった方、ごめんなさい)


 温泉に入り、最後のミカンを食す、これも最高だね。しばらく急坂を下り、起伏のゆるい道となった、鑓沢を渡って大きく回り込んで杓子沢へ出た、のどを潤し小休止、そこからちょっと歩くと杓子沢上部が望める絶好のビューポイントがあった。淡い黄色のダケカンバで染まる山間に落ちる滝があり、その上に杓子の稜線と杓子沢が扇形に口を開けていた、絶景である。
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 杓子沢を望む          杓子沢付近にて       杓子沢付近にて         杓子沢付近にて


 小日向のコルを回り込んだ所に、白馬三山が一望できるポイントがあった。ここにはテントが2張あった、錦なす紅葉の向こうに厳しく立ち向かう三山の姿に、つい自己を許して設営したのでしょう、わかるんだ、気持ちは・・・。しばらく景色に見取れてザックを背負ったまま腰を下ろす。
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小日向のコル付近から
                     
     白馬岳          鑓、杓子、白馬岳        鑓ケ岳               杓子岳


 ここから歩き出したら携帯電話が鳴った、妻からである「白馬の駅前にいる、猿倉着は?」、「12時ごろには着くと思うが」と答えた、と言ってから地図を見ると1時間30分のコースタイムとなっている、今のペースでは2時間はかかるだろう。間もなく樹林帯に入った、必死になってぬかるみの道を歩くが、足が先に出ない。待たせておけばいいや、安全第一で行こう。でも2人追い越して、13:00ジャスト猿倉山荘に着いた、やれやれ。



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