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大猿川を行く(赤城山)  

山行日
    2003年2月6日    晴れ   ナナちゃんと二人

コース 
  (前半の部)
    粕川村おおさる山乃家駐車場→澳比古神社→展望台(つつじが峰通り)→不動尊→不動大滝→(ヤブコキ)→
    展望台→(ヤブコキ)→駐車場
  (後半の部)
    駐車場→(大猿川の荒廃した道に沿って)→乙女の滝→(ヤブコキ)→雨やどり石→小峯→駐車場

 赤城山のハイキングコースも東西南北無数に及ぶ、本日は粕川の尾根(つつじが峰通り)と梨木の尾根の中間域を、当掲示板に頻繁に出没しますの案内で歩くこととなった。ナナちゃんご夫妻とは丁度1年前、鍋割高原の上の避難小屋で出会いまして、荒山登山口から鍋割登山口まで初乗りの四駆で、アイスバーンの道を乗せてもらいました。このことをホームページに一言書き込みましたら、直ぐ見て頂きまして、その後多々ご助言を頂いております。今回の大猿川周辺の散策は私には初めてで、計画の全てをお任せして一緒に歩かせて頂きました。

 アイゼンとスパッツスタイルで7:16おおさる山乃家脇の駐車場をスタートする。天候は晴れ、風が少々冷たい、北を見上げると茶の木畑付近のなだらかな稜線が目に入る、その左手は銚子の伽藍付近だろうかV字に大きく凹んでいる。まず、山乃家の裏手にある、大猿の猿を案内してもらった。“赤城大猿の猿”と書かれた案内板には、『・・・大猿の地名にあやかって、柿の実を持ち公園を見守るあどけない姿を石に刻み込んだ・・・』、とある。
一見ユーモラスな大きな猿である。沢沿いに少し進み、大猿川整備中に発見されたという、小さい石仏“なぜ仏地蔵菩薩”を拝す。脇に美味しい湧き水が引かれていた、さっぱりした、ちょっと甘い感じもした。残雪20cmほどの参道を進むと、澳比古神社が、広葉落葉樹に囲まれた静かなたたずまいを見せていた。山奥の小さな神社に沢山の絵馬が掛けられている、なぜ? 縁結び、子孫繁栄、子宝・・・と由緒が書かれていた。勧めがあって、格子の間から覗くと、それは大きな立派な・・・・・、百聞は一見に如かず、である。

 山道に入る、丸太の階段で小さな尾根に取り付く、見下ろすと一帯は広葉樹の森、低木あり高木あり、と言った感じである。晴れているが、時々うすい雲に乗って白いものが舞ってくる。「雲がなければ、この辺から袈裟丸山が綺麗に見える」とナナちゃんは言う、ビューポイントのようだ、残念。北の尾根も霞む、間もなく南からの尾根と合流する、眼下には群馬の平野部が、そして秩父の山の向こうに真っ白い富士山を映していた。
  
 赤城大猿の猿                                なぜ仏地蔵菩薩

  
   澳比古神社                                 茶の木畑付近の尾根

  
    南の尾根との合流点                        南の登山道

  
  東からの登山道                           平野部の向こうに富士山が見えた

 ここから西方向にルートが進み、すぐに主稜線であるつつじが峰通りに出る、見晴台と表記のあるピークである、8:15着。林道が斜面をイグリ取って、延びてきている、昨年歩いた時に主稜線から100mほど粕川よりに進んだところで終わっていた。道は北に進み、左右切り立った痩せ尾根も渡って間もなく巻き道の分岐に出た。先ほどのピークのちょっと下、西側をトラバースして滝沢不動への分岐点に出る。ここから不動大滝へ進む、樹林帯の斜面をジグザグに降下していく、ナナちゃんもショートカットが好きだ、アイゼンを利かせてスイーッスイーッ。急斜面を下り切って右手からの道らしき所を指して、「これは道ではない、行き止まりだ」とガイドしてくれた。杉森に入り右手に祠を見、下の登山道と合流する。昨年歩いた時に、この入口がわからず、小さい尾根に取り付いて主稜線に出ている。

  不動尊を通って、凍てついた道を流れに沿って歩く、岩場のあちこちにつららが形成されていた。その雪と氷の芸術が、自然が奏でる清流と風の音と調和し、天然のミュージアムのようであった。はしごを数段上がると、不動大滝が全容を現し、クライマックスをむかえた。見上げれば、大空より落つる滝、滝を取り巻く広大な空間、大きく広げた大樹の枝、圧巻である。滝壷には幾重にもヒスイ色をした結氷が寒暖の跡を呈していた、顕微鏡のレベルであれば幾何学的なのだろうが、この芸術は調和を保ちながら時間と共に千変万化していくわけである、自然の想像を絶するものを感じる。景観に魅了され、右に左に、上から下へ、氷上・岩場を駆け巡る。ポイントを探しているアマチュアのカメラマンが4人、目の輝きに温かさを覚える、9:13帰路につく。
  
    凍てつく清流                              岸壁のつらら

  
   不動大滝、上部                             不動大滝、下部

                   
      大滝全容                                     凍てついた壁面

  
    空間に伸ばした大樹の枝                        滝壷を覗く

  
   氷の壁                                    宮城村の尾根を見る、不動大滝付近から

 滝と不動尊の間の左岸に堰堤がある、その付近から道を離れ樹林帯に入る。斜度30度弱、ナナちゃんの後を必死に追う。勾配が緩やかになった所で、何やら青い紐に結ばれた木々を発見して問うたら、林道の工事予定場所と教えてくれた。先ほど滝に向かう時にも矢印があった、粕川を橋梁でまたぎ大胡小沼線に結ばれるとか、一帯の景観も変わってしまうのでしょうね。間もなく正規のルートに飛び出し、ジグザグと斜面を登り、つつじが峰稜線へ、30mばかり高度を上げて展望台へ、10:00着。ここからちょっと進んだところで、「ヤブコキしよう」で意見が一致、急斜面を一気に下る、10分ほどで沢筋まで下ってしまった、10:25駐車場着。3時間9分不動大滝周遊の前半が終わった。

 休憩して10:54、後半の乙女の滝までを案内してもらう。昨夏の台風で、林道と登山道が大きく崩壊し通行不能である、と立て札が駐車場付近にあったが、私の希望で入山することにした。滝の流れも大きな石が中間に挟まり、変わってしまっている、とのことであった。登山道は林道に沿って付けられていたようであるが、大雨の爪痕は生々しく、コンクリートの路肩は大きく傾き、大きな杉の木をなぎ倒し、無残を呈していた。道というか沢というか、その中を倒木をくぐりながら、拾い歩きして堰堤を越え右岸へ、同様に荒れ果てた道を歩く、しばらく行くと林道の終点らしいところに出て、大猿川へ降りる。大猿川の流れを堪能しながら高度を上げると間もなく、目的の乙女の滝に11:45到着した。

 乙女の滝というネームから響く滝のイメージと、別名はね滝から連想するイメージとが一致する方は想像力抜群で、ほめてやりたい。私は“乙女”と聞いて、百人一首の『天つ風 雲のかよひ路 吹きとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ』から、うつむきかげんの麗しい乙女を想像し、“はね”からは勇壮さを想像し、どうも両者が合わないと思っていた。流れ落ちる様相の説明を受けて納得、連想するものが違っていたことに気づく。乙女の滝付近は比較的固そうな火成岩からなり、美しい岩肌とV字の斜面から景観をつくっている。二つの流れがあり左岸よりが乙女の滝で、滝の半分は絞られた流れが勢いよく落ち、滝の中央部の湾曲した部分に沿って噴水のように跳ね上がるらしい。落差は5,6mというところだろうか、挟まった岩も雨季を迎えれば、落下して元の乙女にかえるだらう、その時はまた見に来よう、12:04滝を下る。
  
    ナナちゃんは行く、道なき斜面を!               荒廃した乙女の滝への道

  
  乙女の滝付近の流れ                        乙女の滝付近、中央奥が乙女の滝

  
   乙女の滝                             乙女の滝、中央の黒い石が邪魔してね、乙女が??

  
   乙女の滝付近の流れ                       乙女の滝付近の流れ

  
乙女の滝付近の流れ                          乙女の滝付近の流れ

 少し下ったところで、「尾根は近いですね、登って見ますか」で意見が一致。左岸の斜面に取り付いて北東に向かってグイグイとよじ登る。対岸の稜線の大きな岩が目に入る、つつじが峰通りだろうか、小沼へ抜ける稜線だろうか。クマザサとつつじの低木に支えられて、ほどよい斜面を見つけて小休止、明るい落葉の森、いいな、大好きだ。眼下の街と遠望をまるかじり、いい気分だ。テントを張って夜景でも見たらいいだろうな、なんて考える。ここから、右手のガレ場を巻いて少し上がると、雨やどり石と書かれたプレートの地点に飛び出た、12:39。標高は約1400mというところだろうか。茶の木畑峠まで1.2km50分、大猿登山口まで2.2km50分と書かれていた。
  
  樹間から対岸の稜線                             雨やどり石のプレート

  
   稜線から西稜線                               快適な登山道

 一帯を見渡して驚いた、コナラ、リョウブ、シャラ等の落葉広葉樹、ブナも所々に、そしてつつじの類の群生する自然林が続く尾根である。西側のつつじが峰通りに匹敵する景観である、後世に手付かず残したいものである。緩やかに左右にくねりながら高度を下げていく、木の間から変化する周辺の景色を堪能しながら約1時間、12:37登山口に到着。後半の乙女の滝お山歩が終わった、所要2時間43分。本日の合計所要時間は6時間21分であった。

 おおさる山乃家付近のハイキングコースは整備され大猿の道路沿いに詳しい案内板が設置されている、また粕川村のホームページからも入手可能である。つつじが峰コース、小峯コースとも静かな山歩きを好む人には絶好である。ただし、乙女の滝のコースは立て札に従って立ち入らない方が良い。本日のナナちゃんとの野趣あふれる散策、一緒させてもらって楽しかったなあ、別れ際に「次は、つつじが峰から小峯を1周しよう」なんて言っちゃってね。まだまだ赤城には楽しめるコースが沢山あるなあ、と考えつつ車を走らせる。


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