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庚申山

山行日
    2004年6月8日    曇りのち雨    単独

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    銀山平(国民宿舎かじか荘)→一の鳥居→猿田彦神社跡→眼鏡岩→分岐点(大胎内)→庚申山
    →大胎内→庚申山荘→一の鳥居→銀山平

 梅雨に入って3日ほど、今日は朝日が差している、掲示板の内容に刺激を受けて、それっ!、で出かける。雨は覚悟のこと、運がよければ晴れ上がった皇海山と花々が、と車中で期待は膨らむ。R122から切幹(ギリミキ)橋を渡り、銀山平方向へ左折、北西の角にある庚申山の大きな石碑をチラッと見る。この石碑は昔、庚申山の登山口であった街寄りの磐裂(イワサク)神社から、戦後移したと聞いている、更に最近切幹橋の架け換えで現在の位置に移動している、4mはあるだろう。

 荷物の確認をして、かじか荘の駐車場を、7:23出発する。晴れますように、長い林道歩きの始まりだ、4kmほどであるから約1時間というところ。すぐに舟石林道を右に分ける、路面は雨上がりでじめじめしている。道はあまり使用してないので、路肩は土砂と木の枝が積もっている。間もなく丸石沢を渡る、薄暗い沢に落ちる二段の滝、名前はわからないが、水かさを増した滝はなかなか見ごたえがある。7:44舗装道路は終わり、砕石と水溜りの道となる。遮断機を見て思い出した、今は舟石林道の分岐点から入れないが、一の鳥居まで一般者の通行が出来なくなり、その後ここまで何度か入ったことがある。道端には神事の跡が残っていた、今も信仰の山として崇めている人達がいるのを感じた。

 8:17、登山口である一の鳥居着、真っ赤な鳥居が石段の奥に、右手には庚申講盛んな時代を偲ぶ、“従是庚申山入口 行程十八丁”と刻んである石碑があった。十八丁はメートル法に換算するとおよそ2kmである。左手にある現代の案内板、関東ふれあいの道では、庚申山荘まで2.4kmとあるから、この碑の庚申山とは、庚申講本山(猿田彦神社)、つまり位置的には、お山巡りの分岐点までであった。
  
 滝、丸石沢の橋から名称不詳の2段滝            神事の跡、林道が砂利路となる所

  
 一の鳥居(庚申山登山口)                    庚申講の名残か、当時の道標

 うっそうとした登山道に入る、静まりかえった森に中に水ノ面沢(水飲めん沢、と読んではいけませんぞ)の音だけが聞こえる。急流を下るのか、時々滝の落ちる音のように聞こえる。腐葉土の上を歩くような道があり、木製のしっかりした橋を数回渡り、左岸右岸を行ったり来たり、落葉広葉樹の森は次第に明るさを増した。横に大きなうちわのように葉を広げ、満開に咲くヤブデマリの白い花、緑一色の深い森でここだけが輝いていた。

 庚申講時代の一里塚ならぬ道標、百丁目の碑、この起点は足尾町遠下の磐裂神社からである。今の道路では如何ほどになるのか分からないが、当時は山をいくつか越えて道が通じていたとか、銅山開発によって付け替えられたようだ。ちなみに磐裂神社から庚申山まで古地図だと一百二十四丁(約13.4km)となっている、8:50鏡岩着。

 案内板によると、この一帯の地質は秩父古生層から成っている凝灰岩のようだ。水分を蓄えられるようで、イワタバコとコケが一面に張り付いた大きな岩、鏡岩の上は樹木が生え、下は岩陰の広場といった感じの不思議な光景をつくる。夫婦蛙岩、仁王門と奇岩の続く登山道でキョロキョロしながらストロボをたく。間もなく、森の中が急に明るくなり、そのあたりから樹床は低い笹に被われてくる。ダケカンバ、ホウ、カツラ、サクラなどの落葉広葉樹と稀にシラビソとコメツガが見られる、水がめの美林である。
  
 うっそうとした森の中で満開のヤブデマリ          大きな岩に密生するイワタバコ

  
 百丁目の碑                           鏡岩

  
       明るい樹林をゆく                 林床は背丈の低い笹に被われている

 登山道の両脇に檜が並んでくるとお山巡りの分岐点は近い。その時右手に赤い花を見つけ、かき分けて入る。花真っ盛りのクリンソウ達の出現である。濃い赤と紫がかった赤、濃淡2種、深山に相応しくない大きすぎて派手な色合い、といいたいが綺麗だ。見惚れてしばし観察、そうだ、昔小屋(山荘の北側)があってそばに自生していたクリンソウがあったっけ、それを思い出した。今も残っているかな、帰りが楽しみだ、9:22庚申講本山(猿田彦神社)跡、お山巡り分岐点到着。庚申山荘0.3km、一の鳥居2km、庚申山(お山巡り)2.4km、と道標にあった。
  
 クリンソウ自生                         クリンソウの花

  
 お山巡り分岐、庚申講本山(猿田彦神社)跡         小さい滝、宇都宮大学ワンゲル部小屋付近

 いっこうに日が指さない、雨も降ってこない、こんな天気でよい、雨が降らなければ。宇大のワンゲル部の小屋を過ぎると笹道をジグザグしながら急登する。周辺の明るさを感じて見上げると、キリが上から降りてくるではないか、見る見る霧に包まれてしまった、チクショー!! でもバラツキがある、笹の斜面に咲き残った一株のシロヤシオ発見、笹の急斜面を下りシャッターON。今度は、夢中で降りた斜面を上がるのに一苦労、濡れた笹でスパッツは着けていたがズボンを濡らしてしまった。
  
 山頂部からガスってきた                     お山巡り最初の鉄段

  
 シロヤシオが一株残っていた                  シロヤシオの花アップ

 視界の5mとない尾根筋をしばらく進み岩場に出る、斜面にユキワリソウ(サクラソウの一種)を見つけ、やった! ザックを登山道において、岩場を散策、足元に気を使いながら岸壁を見上げ、あっちこっち。「あった!、あった!、コウシンソウ」、で思わず歓喜、感動の瞬間である。残念ながら霧の中、光量不足でストロボをたきっぱなしで撮る、撮る。ほとんど垂直の岩場を好むとか、ムシトリスミレに似た草丈3,4cmの小さな植物コウシンソウ、この立ち込める霧がなかったら生育できないのだろうな、霧に守られているのだ。悔しさ半分、写真の写りはどうでもいい、脳裏にしっかり焼付けて登山道へ戻る。雨がポツポツやってきた。
  
 垂直の岩場に自生するコウシンソウ                   コウシンソウ

  
 コウシンソウ                           コウシンソウ、2つ咲いているのがふつうらしい

  
 ユキワリソウ(サクラソウの一種)                ユキワリソウ

  
 ユキワリソウ、道端にも                    コウシンソウとユキワリソウ

 チョッキを脱いでヤッケを着け歩き出す、雨は徐々にと大粒になる、木陰で上下雨具に換える。ハチマキも帽子に換えた。足場も悪いし、雨具を着て視界が余計狭くなってしまった。こうなったら安全第一、岩陰で早い昼食、霧に包まれた光景を岩陰から撮りながら食す。吊橋、ハシゴ、鉄階段、クサリ、トラロープ、針金のオンパレードである。一ヶ所、ヤバイ所?(個人差)を抜け、間もなく庚申山荘から直接山頂へ向かうルートと合流して一安心、11:14。
  
 最初の吊橋                           カミソリみたいな道

  
 二つ目の吊橋                           眼鏡岩、4つ穴あり

  
 ハンショウズル                          ミヤマカラマツ

 山頂へ0.7kmと道標にあった、30分というところかな、先へ進む。ウコンウツギに挨拶して、ハシゴを上がる。しばらくロープ、クサリの付いた岩場が連続して、見晴らしの良さそうな岩場に出る。♪♪目を開いても何も見えず、・・・・・・♪♪、ここを過ぎて間もなくコメツガの樹林帯に入り徐々に緩やかになり庚申山山頂に立つ11:40。ここも若干うすくなったが霧の中、ザックを我輩に見立てて記念写真を撮る。傍らに咲き残った一枝のアズマシャクナゲ、「ありがとうさん」、霧も雨もことも吹っ飛んでしまう鮮やかな花だった。山頂に付けられた記念板(?)に標高1892mと1901の2種あった、いずれがこの点の標高だろう、あとで調べよう、11:55鋸山への標識を横目で見つつ、山頂をあとにする。
  
 庚申山荘からのルートに合流                 ウコンウツギ

  
 庚申山1901m山頂                       一枝残っていたアズマシャクナゲ

 12:12、山巡りへの分岐点で五人に出会い、思わず「どちらへ・・・・・・」、「見回り・・・・」、の返、「雨の中、ご苦労様です」、「どちらから・・・・」、と尋ねられ「山めぐり・・・・」、「1ヶ所危ないところが・・・・・・」、「ありました、ちょっとね、すぐそこの左手山側」、「そう、そのあたり」、先ほどの話と合った、整備に上がってきたそうだ。山荘までの下山路、トラロープの張替え、登山道の付け替え、整備のあとが数個所あった。このルートは何度となくルートの変更を重ねていて、間違って古いルートに踏み込み悩むと聞いている、関東ふれあいの道もあまくみるとシッペガエシをくうところ。山荘の手前でクリンソウにまた逢い、しばらく観賞、12:38庚申山荘着。
  
 整備の終わった危険箇所?、初の門脇           付け替えられた真新しい登山道

  
 クリンソウの中を六林班への道が             庚申山荘

  
 ヤマツツジ、これもなぜか一株だけ              水ノ面沢の滝

  
 ヤブデマリ、往路で撮った木                  ショウキラン

 山荘前で小休止、ヤマツツジの咲き残り(散り残りかも)に逢って、山巡りの分岐点着12:52。あとは往路を戻る、鏡岩13:08、13:28登山口へ、13:55舗装道路へ出て、14:18かじか荘駐車場へ戻って、今日の山行は終わった。総所要時間は、6時間55分であった、天気は期待に反したが、目指した花に逢えたのがなによりの土産だった。不思議なことがあるものだ、逢った花で、ヤマデマリ、シロヤシオ、アズマシャクナゲ、ハンショウズル、ミヤマカラマツ、ウコンウツギ、ヤマツツジ、ショウキラン、これらはたったONE-CHANCEであったことだ、ついていたのかな。

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