気ままな男の山歩きHOME  山行記録(日付順 )  山行記録(山域別)  走れ!“忠治”
sub3-158
飯豊山・大日岳
  
山行日
    2004年7月22,23日   晴れ    単独

コース 概略図はこちら
   1日目
    大日杉登山口→ザンゲ坂→長之助清水→御田→滝切合→地蔵岳→目洗清水→御坪→御沢分れ
    →主稜線合流→切合小屋→草履塚→姥権現→御秘所→一ノ王子(テント場)→本山小屋(飯豊山神社)
    →飯豊山→本山小屋→一ノ王子

   2日目へ 
    一ノ王子→本山小屋→飯豊山→玄山道分岐→御西岳→御西小屋→大日岳→御西小屋→御西岳
    →玄山道分岐→飯豊山→本山小屋→一ノ王子(テント撤収)→御秘所→草履塚→切合小屋→大日杉分岐
    →御沢分れ→御坪→地蔵岳→滝切合→御田→長之助清水→ザンゲ坂→大日杉登山口

 飯豊山という山、1975年に大雨の中を山都町の川入から歩き、足元を見ながらの往復、たった一つ忘れられないのが、種蒔山付近のお花畑で咲いていたヒメサユリの花である。今回は、この花との再会を求めて、この13日に入山するため御沢のキャンプ場で朝を待った。しかし、あの豪雨、土砂崩れで通行止め解除を待って、引き返してしまった。梅雨明けを待って、今度こそは、で出かけた。登山口を飯豊町の大日杉に変えて、テント2泊で大日岳まで、気合充分で出発、高嶺の花ヒメサユリ、今行くぞ。

1日目
 ここからの入山は、はじめてなので、前日に大日杉小屋の管理人の方に情報を頂いて、登山カードを投函しておいた。何といっても大雨の後、気がかりな出発であった、発電機に給油中の管理人に、遠目で挨拶、4:32意気揚揚、夜が明けきれない杉森に入った。すぐ、左手に大日杉跡がある、“樹齢千年といわれる杉の切り株跡、旧飯豊山登山口の小屋のあった場所で、明治末伐採された。飯豊山信仰者に親しまれてきたこの大日杉は、信者の登山の無事を祈った、日本武尊ほか四神社が祀られていた。その中の大日堂の・・・・・・、当地を偲ぶ貴重な遺産として保存するものである”、という地元教育委員会の案内板である。
  
 大日杉小屋、                   駐車場、ダム寄りにもあり

  
 磐梯朝日国立公園 大日杉登山口と記されている  大日杉の言われ、樹齢1千年の切り株跡

 杉森は浅く、すぐにブナの自然林となる。雨上がりの泥濘の多い登山道、根っ子や石ころを避けながらジグザグに急登する。間もなく長い鎖場に出る、登りきると、そこに“ザンゲ坂”の標識があり、4:55着、標高700m、御田600m、登山口300m、と書かれていた。地図によれば駐車場の標高が612mであるから、わずかに100m弱登っただけである。ここで標高差をみると、駐車場からの概略の累積標高差は、飯豊山まで+1790m、テント場から大日岳が+420m、大日岳から駐車場までが−2210mである。見かけは、1520mであるが、アップダウンを繰り返しているので、意外に数字的には大きい。

 どうやら、ここまでは斜面につけられた道を上がってきたが、ここからは沢の間に張り出した尾根を、ひたすら登る。沢の音、左が大きく、右のトーンは低く、時々聞こえる鳥の声に、にじみ出る汗も幾分和らぐ感じ。やがて沢の音は消え、静かな森となる、間もなく長之助清水という地点にでる。せせらぎの音だろうか、トラロープの張られた左手の奥からチョロチョロと聞こえてくる、5:18。緩やかになったかと思うと、また斜度を上げる、繰り返しながら激しく高度を上げて行く。平坦になったかと思ったら、大きなブナが目に入り、続いて素性のいい杉の大木が目にとまった。泥濘脇には、御田と書かれた道標があり、杉の根本には“御田・・”の古い石碑があったが、もしかしたら、この湿地を田に見立てて、五穀豊穣を祈願したのであろうか、想像の域である、5:33着。
  
 ザンゲ坂、長がーい鎖                 長之助清水、ここからトラロープ伝いにすぐ

  
 御田、杉の根本に石碑が               一帯はブナの自然林

 ここから左に回りこんでブナ林を進む、低木のタムシバ、オオカメノキ、カエデ、ナナカマド、ネマガリダケが混生、登山道に沿ってイワウチワやアカモノが光の空間に共生していた。突然樹間が開け、南に大きな谷を隔てて、地蔵山〜三国岳の尾根が目に入った、三国小屋もはっきり見えた。しばらく、また樹林帯の中を進む、やがて勾配が緩やかになり、眺望の開けた滝切合着、6:28。ここからは、三国小屋、切合小屋、本山小屋が見えた、晴れているので手にとるように目に映る。滝切合からまた勾配がきつくなる、高木は姿を消し、ブナ、ナナカマド、カエデ、サラサドウダンなどの小木に変わる。時々、樹間から山並みを眺め、呼吸を整えてはまた登る、6:55センジュガンピ、クルマユリの出迎えを受け地蔵岳、1539m着。

 山地図のコースタイムでは、ここまで3時間40分、テントをかついで約2時間半、とばしたわけでもないのに、早いのにびっくり。ここまで来れば、飯豊山までとして標高差で半分、あとは景色を楽しみながら歩けばよい。三角点は、登山道から一段上がった所にあった。朝食をすませ、7:10出発。
  
 三国小屋、切合小屋が見える、地蔵岳山頂付近  飯豊本山小屋が見える、地蔵岳山頂付近

  
 地蔵岳山頂、1539m                三角点は登山道の脇上

  
 センジュガンピ                      クルマユリ

 枝が覆い被さるような細い道を60mほど下って、眺望が開け、小さいアップダウンを繰り返す。花の終わったヒメサユリを発見、実が大きくなっているところから、もう遅いかな、でも上の雪田付近では花が見られるだろう、そう思い道に沿って生えているヒメサユリを一本一本見ながら歩く。小さいピークから切合方面を撮り、また下り、すぐに登り返す。小さい樹林帯を抜けると、目洗清水と書かれた道標に出る。20mほど下に流れる水を見る、この水は涸れることはないのだろうか。右手に入り込むと、眺望が開け、開き始めたキスゲの花と飯豊山を入れて撮る。ここから見えるピークは飯豊山神社と本山小屋のあるピークであって、飯豊山の山頂2105mではない。

 荷物は利くが、眺望を堪能しながら、快適な尾根歩きが続く、タカネマツムシソウ、キンレイカ、トウキの花を見、真っ白なダケカンバが出てくると、石の祠のある御坪に着く、8:30。水があれば、この辺でテントを張ったら最高だ、熊の心配もないだろうし、でも非常事態なら許されるだろうが、常識的には?
  
 目洗清水、下方にせせらぎあり             飯豊山神社のあるピーク

  
 御坪、石の祠と鉄剣あり                 キンレイカ

  
 トウキ?                          マツムシソウ

   
                           飯豊山山頂付近を見る

 御坪から少し下ると、正面に雪渓の見える御沢分れに着く、8:41。ここには道標があり、真っ直ぐ進むと雪渓を通って切合小屋に出る。左のルートを通れば尾根を抜け、種蒔山を北に巻いて三国岳から来る主稜線の道に合流する。この直進の雪渓ルートが管理人の言っていた危険地帯である。道には、進入禁止ととれる赤旗が道に斜めに立てかけてあった、小休止して8:47出発。

 南に泥濘んだ道を登ると、花崗岩質の岩場に出る。ハイマツ帯に入った、ハクサンシャクナゲやナナカマドの低木も混生している。岩場には、ミヤマコウゾリナ、タテヤマウツボグサ、キンレイカ、タカネマツムシソウが沢山花をつけていた。ここを下ると、種蒔山の東斜面から落ちてくる水量豊富な流れを横断する。手を切るような冷たさ、ザックからコップを紐解き喉を潤す、ああ、美味しい、もう一杯。一帯は雪が溶けたばっかりで、湿原の植物は真っ黒な地面に、針のような葉を一斉に出していた、一気に緑になるだろう。

 ここから北側の斜面を巻く、すると咲き残ったと言おうか、咲けなかったといおうか、2本の哀しきヒメサユリに逢った。もう、今回は見られないだろうと、残念ではあるが仕方ないことだ、登山道では多くの元気な株を見たのだから、機会はある。切合小屋の水場の雪渓を上に巻き、主稜線に合流する、9:45。
  
 御沢分れ、現在(7/23)通行禁止        ミヤマコウゾリナ

  
 ホツツジ                          タテヤマウツボグサ

  
 切合小屋を見る                      種蒔山東斜面の流れ、飲みきれません

  
 哀しき残り花、ヒメサユリ                主稜線(三国小屋からのルート)に合流

 主稜線を歩き出すと、すぐに登山道に沿って土砂崩れの生々しい跡、登山道にもうちょっとのところ。小屋の方が見回りにやってきて、大して驚くような様子はなかった、むしろ客の数が気になるらしく、しきりに問い掛けてくる、「あと・・・・人?」、「車、・・・台」、9:55切合小屋着。群馬の高崎から来た18人パーティーが出発するところだった、雨の中を歩いて本日やっと晴れたとか、川入に下ると言っていた。小休止して、10:00発。
  
 山頂方面を見る                     登山道際の土砂崩れ現場

 小屋の東側を通って、ナナカマド、カエデ、ネマガリダケの生い茂る道を抜け、湿原を右手に見ながら進む。ハクサンコザクラ、アオノツガザクラが咲き出していた、見頃はまだこれからだろう。飯豊山の固有種のイイデリンドウの群落がこの辺にできるらしいが、全然見当たらない、これから湿原が賑わうのだろう。それを求めてか、登山道が横に広がり、正規の道がわかりにくい、川の中を歩いているような所もあった。小屋から40分、10:40草履塚という道標の建つピークに着く。切合小屋1.0kmkm、飯豊山神社2.1kmと書かれていた、重い荷物もあと2kmだ、頑張ろう。
  
 切合付近から大日岳                  ハクサンコザクラ、咲始め、草履塚南斜面

  
 ヨツバシオガマ、同じく                アオノツガザクラ、同じく

  
 草履塚1908m、バックは大日岳         ミヤマダイモンジソウ、草履塚北斜面

 大日岳の西峰、西大日岳に薄っすら雲がかかってきた、小休止して、10:48草履塚を出る。ここから真正面に飯豊山神社のあるピークまで、5,6ヶ所大小ピークが並ぶ。まず、70mほど下り、小さいピークを過ぎると、鞍部に奇妙な石仏がある。姥権現がこれである、正直いって怖い顔の権現様である。花崗岩質の小さいピークが連続する、御秘所と書かれた所も通過する11:10、ここも飯豊信仰の歴史だろうな、わからないが。

 小さいピークを過ぎると、人工的な石積を上部に見る、いよいよテン場のある一ノ王子である。御前坂といわれる急坂を適当に蛇行しながら高度を上げる。ガスに巻かれたら不安な場所だ、所々にペイントのマークがあるが、下りは要注意だろう。それにしても、この斜面は長かった、200m近くあったような気がする、一ノ王子着12:10。一ノ王子は、方形に石組みされ、コーナーの穴に石仏が安置されていた、と先輩から聞いたことがある、あとで見よう。
  
 ミヤマウスユキソウ(ヒナウスユキソウ)、同じく   ここまで来て飯豊山山頂(左ピーク)が見えた、右は飯豊山神社方面

  
 姥権現、背景は飯豊山神社方面            飯豊山神社方面のピークに向かっている

  
 御秘所                         マツムシソウとアカタテハ?

  
 チシマギキョウ                     鎖場、岩稜を越える

  
 尾根道、山頂部も近づいた             大日岳・御西岳方面

  水場100mの道標あり、テント、小屋利用者の水場らしい。まずテントを設営、荷物の整理。休んでいたグデングデンに酔ったおっちゃんがいて、話し掛けてくるが、ロレツがまわらないのと、方言だろうか、日本語が半分しか通じない。しばらくすると、相棒が水場から戻ってきて、出発したが、フラフラで立てない。でも歩き出していったが、この先どうなったか、知る由も無い。水場を往復、全部で5リッターほど持ったかな、13分かかった。

 さて、時間も早いことだし飯豊山山頂を往復する13:14一ノ王子発。小屋まで石ころの道を分けながら歩く、13;20に本山小屋に着いた。早速、テント場のことで聞いてみた。「使用料金は、神社が徴収している。今は留守だからご自由にお使いを、ゴミは持って帰ってね」、という。等など丁寧に応えてくれた、有難い。
  
 一ノ王子                        一ノ王子から本山小屋(左ピーク)

 本山小屋のちょっと奥に飯豊山神社がある、といっても入り口の石灯籠があるし、地図にも書いてあるので気付くが、そんな所である。ここから西方向に稜線に沿って道は曲がる、砂礫の道であるが歩き易い。夏の花が点々と咲いていた、切合小屋付近で見られなかった、飯豊山の固有種、イイデリンドウがあっちにもこっちにも、ヒメサユリの化身かな?、大歓迎。清楚な色合いに尻をついてにらめっこ。「お初にお目にかかりまして、お元気ですか」、「良く来たね、この山奥深くまで、では飯豊の舞いを始めます・・・・・・・」、なんて変な話、13:38飯豊山山頂2105m着。
  
 飯豊山、本山小屋付近から             一ノ王子、本山小屋付近から

  
 飯豊山、もうすぐ山頂                  山頂付近から本山小屋(左)〜一ノ王子(右)、雲海に磐梯山

  
 イイデリンドウ、山頂付近               イイデリンドウ、山頂付近

  
 山頂付近から本山小屋(左)〜一ノ王子(右)、飯豊山山頂から   飯豊山山頂2105m、一等三角点(黒い石だった)

 「絶景かな絶景」、と誰かが言った、この言葉がこの展望に合う。飯豊連峰はでかい、西の大日岳方面の山塊、北西の北股岳方面の山塊、北に延びるダイクラ尾根、南に延びる歩いて来た稜線、起伏に富み、緑と残雪に見る自然の調和、じっと見入ってしまう。これまでに、計画しては流れ、今回も自宅待機して天候の回復を待った、それもある。遠方に目をやれば、東に朝日連峰、その連峰から抜きん出て鳥海山、月山が鎮座する。蔵王連峰が隣りに、吾妻連峰も連なる。そして宝の山の磐梯山。山また山、名の知れぬ山々も、この大きな飯豊連峰に変化をつけて、一躍を担っているんだろうな、そんなことを考えてしまう。
  
 北股岳方面、飯豊山山頂から            ダイグラ尾根、飯豊山山頂から(吊橋落下して通行不能とか)

  
 コガネギク(ミヤマアキノキリンソウ)、飯豊山山頂付近   オヤマノエンドウ、飯豊山山頂付近

  
日没間際の大日岳、一ノ王子テント場から       飯豊山に沈む夕日、一ノ王子テント場から

 14:15、テントに戻る。一ノ王子跡を覗くが、石積みの歴史は、一瞬の覗きでは、今となっては解くことの出来ない、微分方程式のようなものだ。飯豊山に沈む落日に山行祈願して、一日目の山行を終えた。本日の所要時間は、8時間39分であった(テント設営等除く)

2日目へ



 

気ままな男の山歩きHOME  山行記録(日付順 )  山行記録(山域別)  走れ!“忠治”