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一切経山・東吾妻山
 
山行日
    2004年7月12日  曇り後晴れ     単独

コース  詳細はこちら
    兎平駐車場→浄土平→酸ガ平分岐→一切経山→酸ガ平分岐→酸ガ平避難小屋→鎌沼
    →姥ガ原→東吾妻山→景場平→道路→鳥子平→桶沼→兎平駐車場

 兎平駐車場を4:08出発する、この山も10年ぶりだろう。前回と全く同じコースを設定したのは理由がある。一つには周辺に点在する湿原の魅力、二つには一切経山から見られるという魔女の瞳(五色沼)であるが、この状態では後者は明らかに望み薄。雲の流れは早く、稜線がボーッと見える程度で視界はよくない。浄土平北西の分岐点を右へ進むと山道が始まる、左西方向は沢のようだ、右手はうっすらと霧の中に東へ延びる尾根が見える。石ころを避けるように道が上へ延びている、広い斜面では大勢の人が歩くので幾筋も道が出来ている、ペイントの目印に沿って高度を上げる。

 先ほど稜線に見えた所は、南の火口壁のようだ、茶色の水たまりは火口のようだ。火口の縁を抜けると若干勾配が緩やかになり、花をつけたイタドリが目立つ、間もなく酸ガ平、酸ガ平避難小屋方面の道を左に分ける、一切経山は右上へ進む、4:50。霧が濃く山並みらしいところがかすかに見える程度、単に雲の濃淡かも知れない。山道の両サイドはトラロープでガードされ、道をはずすことはない、人にも植物にも良好である。

 間もなく、半円球の山頂部が霧の中に現れる、雲間からかすかに日がさした。でもそれは一瞬のこと、また薄暗い世界に戻り山頂を踏んだ、5:08。山頂は半径50、60mほどで平坦である、中央にケルン状に積石があり、そこに祀られているのだろうか神事の跡があった。その東側に山頂のシンボルと三角点が並んであった。魔女の瞳といわれる五色沼は、直線距離で500、600mの所にあるのだが、この状態では全く見えない、見えるのは平坦な山頂部だけ。早々に分岐点に戻り5:24、ガレている道を下り、酸ガ平避難小屋着5:33。
  
 浄土平北西の分岐点、一切経山は右上へ進む    酸ガ平分岐、一切経山は右上へ進む

  
 クロマメの木、白い点が花               視界は良くないが、左右トラロープが山頂まで張られている

  
 一切経山山頂部                     一切経山山頂、視界50m程度

 避難小屋はすっかり建てかえられ、明るい雰囲気の感じで、気楽に立寄れる。まずは腹ごしらえをして、次はこれから先のルートのため着替えることとした。むすびを口にしていると、突如朝日が窓からさしてきた。カメラを持って外へ、酸ガ平の湿原が大きく開けたではないか。すばらしい景観に、口の動きが止まり、見下ろす緑のジュウタンに時間が止まった。開放された空間は、しばらく続き、第一幕は閉じ再び霧につつまれた。ステテコに雨具をはいて下は万全、上もチョッキをとって露払いのため雨具を着用して、5:58避難小屋を出る。
  
 避難小屋から南方向、酸ガ平           避難小屋から西方向、酸ガ平と鎌沼

 すると、第二幕の開演か、またガスがとれ天気は回復してきたのである、ラッキーなことよ。南に下がって、木道を分岐点で右折、鎌沼を西方向にまわる。池塘は淡い緑に囲まれ、昆虫が飛び交い、巣があるのだろうか、カモが首をもたげてこちらを警戒しているようだった。コバイケイソウ、コイワカガミ、チングルマ(残り花)、ハクサンシャクナゲの花、茂みから聞こえるウグイスの鳴声、遠くではカッコー、沼に点在する岩石のアクセント、時々霧が流れてくるが、これがまたいい、自然の風景にひたり満喫する。6:28、鎌沼の西側で浄土平への道を分け、一段上がって姥ガ原へ抜ける。
  
  酸ガ平の池塘、中央にカモ            酸ガ平の池塘

  
 コバイケイソウと鎌沼                     コイワカガミ

  
 鎌沼の西北側、白色はハクサンシャクナゲ         ハクサンシャクナゲ

  
 鎌沼西側、浄土平分岐点付近              ゴゼンタチバナ

 姥ガ原は、天然の造り出した日本庭園のようだ。針葉樹の森が囲み、石、と木、高山植物が見事に調和している。そこに、風が抜け、鳥が奏でる、せせらぎが足元を流れる。残念ながら花の時期は過ぎている、ハクサンシャクナゲは実をつけ、チングルマは綿毛を風にゆらしていた。わずかにシラネニンジンの白い花が秋の花の出番をつないでいた。
  
 姥ガ平、日本庭園を思わせる景観          同じく、チングルマは綿毛をなびかせていた

 姥ガ平の木道の終わる所で、右手谷地平方面、左手浄土平へ道を分ける、6:38。東吾妻山は小沢の流れに沿って、というよりは沢の中を歩いて、標高差200mほど登る。赤い磨り減ったような石が出てくると、そこが出発点だ。すぐにコメツガの樹林帯に入り、幼木と小枝に手を引かれて高度を上げて行く。足元は悪いが、ここを通る以上は仕方ない。沢筋には、モミジカラマツ(?)が連続して生えている、今丁度花の時期だ。モミジカラマツ(一名モミジショウマ)と思うが、花形はカラマツの若芽のようではない、だから?とした。

 一登りして沢の水がなくなると(時によって当然異なる)、間もなく枯死したシラビソが林立する。この景観も理由は難しいが、見た目には森林の世代交代と見え、自然の力強さがうかがえるのだが。ここを過ぎるとほどなく、大きな木柱の道標があり、ハイマツ帯に入り山頂直下である、7:16。
  
東吾妻山への登山道、真っ赤な磨り減った石     ほとんど沢状の道、シラビソの樹林帯の中

  
 沢筋にモミジカラマツ(?)群生             枯死した木が目立つ所、樹床には若木が密生

 樹林帯を抜け開放感に空をあおぐ、次の瞬間被っていた霧が払われて青空に、チャンスはこれだけ。また霧の中の山頂へ、東吾妻山山頂着、7:22。ここは眺望の良い所と聞くが、またも残念賞、広々とした雰囲気だけは一瞬であったが見とどけた。山頂からは北側のハイマツ帯に比べると南は少なく、距離にして5,6分の1、南はシラビソの樹林帯が迫っている。山頂の東西は狭く、トラロープからすると落ち込んでいるようだ。想像の世界から、現実の世界を目指して、景場平へ向かう。
  
 ハイマツ帯へ、山頂近し                  山頂の手前で青空が一瞬

  
 東吾妻山山頂                        南、景場平への道、大きな木柱あり

 山頂から4,5分下ると湿原に出る。霧はわずかにかかり、湿原のイメージにはピッタンコ。やっと出逢った一輪のタテヤマリンドウ、よくよく見ると精細な花である。色は単純な淡青色ではない、大きな5つの花弁の周りは濃く、少しずつ薄くなって花の中心に向かう。間にある小さい花弁は単純な淡青色で形状は先端が尖っている。ここでは霧がとれ明るくなったので、精一杯開いて迎えてくれたのだろう。酸ガ平にも沢山あったが、まだ目覚めてなかったのだろう。

 ここからが、山道のクライマックスだ? 足場はツルツル、ネマガリダケをかき分け、たっぷり成長した滴をまともにかぶって歩くのである。樹林帯にも入り視界も無い、景場平まで200m下る、我慢の道だ。下る、下る、もくもくと下る、中間地点を過ぎたと思われる所で、はじめて出会った、40代の夫婦のようだ、8:05。景場平は、もうすぐかと思ったが、時間的に着くはずない。先ほどのお方のお陰か、少し露の程度が変わってきた、相手も同じことか。
  
 山頂南西の湿原                      タテヤマリンドウ

  
 モウセンゴケ                  景場平まで、登山道はこんな所が多い、あとはネマガリダケの中

 土の露出したV字の道で、ストックが深く刺さってしまい、バランスをくずしてコケちゃって、尻餅ついてご免なさいをしちゃった。ズボンは泥だらけだろう、見ても仕方ない、雨具だから大丈夫さ。8:35やっと、景場平の木道に入った。

 花を見、空気を嗅ぎ、風を感じ、自然の中に我が身を置く、良い時空だ。湿原に走る一筋の道、先端は極楽浄土に通じているのか。霧は音も無くやってきて、草木を包み、また去っていく。一人で佇んでいると、現実の世界から離れていくようだ。
  
 イワオトギリ                         コバギボウシ

  
 寒冷強風独特の樹形の森に囲まれた広々した高層湿原  横に這った大きなコメツガ

  
 景場平脇道の行止りの丸い沼              点在する池塘

 木道が終わり、またグシャグシャな樹林帯に入る、あと道路まで70,80m下ればよい。大きな岩石を乗越えて、平坦な地形になると、真夏の太陽が照りつける現実の世界で、道路へ飛び出た、9:02。出迎えたのは、同じ霊長類、狭鼻下目オナガザル上科のニホンザルの小さい群れだった。こちらは狭鼻下目ヒト上科のヒトである。どういう意味なのだろうか、道路に糞をまき散らし、路肩で毛づくろいをしている。猿語が解れば聞いてみるのだが、一種の縄張りの主張なのだろうか、私は猿語を知らない。
  
 再び泥濘を抜ける                       ほどなく道路へ

  
 野猿の出迎え、点々と糞をまき散らしてあった     一切経山もくっきりと夏空の下に

 道路を横断し、鳥子平の湿原に入る、地形的には道路と平行して、一段下にあるようだ。ワタスゲもこの日差しで乾き、白い綿毛を湿原になびかせるだろう。タテヤマリンドウも大きく開花し清らかさを競っていた、ツルコケモモも可愛いピンクの花を下向きにモウセンゴケの間に咲いていた。
  
 道路を横断して鳥子平へ、ワタスゲが水を含んでイマイチ  タテヤマリンドウが見頃

  
 タテヤマリンドウのアップ                 ツルコケモモのピンクの花

  
 コメツガの樹林帯が続く                パッと開けると吾妻小富士が南にズッシリ

  
               ハクサンシャクナゲの群生地へ入り、ここをちょっと上ると

  
 神秘的な桶沼を下方に見る               桶沼から見る一切経山

  
 東吾妻山、山頂には雲が                兎平駐車場脇に真っ赤なコウリンカが

 コメツガの樹林帯が続く、川を渡り、幾分上がってまた下って行く。平坦になった所で左手に吾妻小屋、シャクナゲの小道から吾妻小富士を眺め、左に少し登ると、神秘的な桶沼を下方に見る。ルリ色の水は、魔女の瞳の代わりなのか、桶沼から見る一切経山からは、今朝の天気は何だったのか、と思わせる雄姿を映していた。雲の取れない東吾妻山を見て道路へ降りると、兎平の駐車場だった、9:43着。総所要時間は、5時間35分であった。梅雨の明けぬ山行であるから、まあ良しとしましょう。しかし、花の真っ盛り、秋の紅葉の時期に歩いたら良いだろうな、秋の草紅葉も良いだろうな、行きたい山が多すぎて、混乱しそうだ、でも楽しみだ。



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