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鳳凰三山(薬師岳、観音岳、地蔵岳)

山行日
     2006年10月20日  曇り時々薄日   単独

 コース
    青木鉱泉→(ドンドコ沢横断、小橋あり)→(林道小武川線)→中道登山口→御座石→薬師岳→観音岳→鳳凰小屋分岐
    →赤抜沢ノ頭→地蔵岳→鳳凰小屋→五色滝→白糸滝→鳳凰の滝→南精進ケ滝→青木鉱泉


【前置き】
 今年の計画に南アルプスは2,3あったが、どうも足が遠い。北部の広河原からは入ろうとすると、バスの制約を受ける。土日と天気を合せ、私的な都合を考えるとチャンスは、更に少なくなってしまう。初冠雪の声を聞く季節、本年の無積雪山行も今月いっぱいだろう。どうしても一座踏みたい、調べていくと直接登山口へ入れ、適当に楽しめそうな、鳳凰山山行に気付いた。累積標高差2000m、山地図でコースタイムを合計するとざっと12時間半、休憩時間をプラス1時間、滝とオペリスク見物で1時間とし、最大14時間半とみた。うまくいけば、コースタイムの12時間半の範囲で可能と判断して出かけた。

 まず、青木鉱泉までの道路で往生した。R20の円野町の小武川沿いの林道を利用する方法と水神で武田橋(あるいは、本町の船山橋)を渡り甘利山の西を通って入る方法がある。前者を夜間走ったが、全線未舗装ガタガタ、狭い、ほとんどガードレール未設置、標識は各ポイントに小さいものありで、帰路は後者を走ったらほんの一部未舗装だったが、道幅もあり安全であった、ということを先に書いておこう。

【青木鉱泉から中道経由で薬師岳へ】
 最大時間を予想して、ヘッドランプをつけ早発ちとなる、4:40青木鉱泉有料駐車場。鉱泉を抜けると、ドンドコの山コースを直に分け、案内板にぶつかり二手に分かれる。本山行は、左側薬師岳方面に入り、復路ドンドコ沢沿いに右手から下りて来る。左に入ると直に河原に出、小さい橋を渡る、この辺が定かでなかったが、駐車場に薬師岳近道と書いてあったので迷うことなく入れた。橋を渡って市営林道小武川線をしばらく歩き中道登山道入口に出る、5:18。林道には枝道が幾本かあったが、小さい標識がすべて要所にあり、真っ暗な道でも不安はない。

 山間に入るやいきなり急斜面をジグザグきって登って行く。時々聞こえる猿(?)の鳴き声が気持ち悪い、紅葉しているようだが、まだ暗くてそれどころではない。薄明るくなって、一帯はカラマツの人工林で、広葉樹とシラビソが混生しているようだ、間もなく林道へ飛び出た、5:58。地図を見ると登山口の手前で分岐した林道が登山道を約1600m地点で横切っている。そこには、中道コース登山道入口と書かれたプレートがカラマツに縛り付けてあった、山梨県外の軽自動車が2台止めてあった。広葉樹混ざりのカラマツと笹の斜面が続く、樹間に時々山並みが姿を現す、よく見ると地蔵岳で象徴であるオペリスクもはっきり見えた、6:20。角度が変り、ズドンとした山頂が目に入った、どこだろう、北岳でも駒ヶ岳でもない、塩見岳? いずれも角度的におかしい。形から八ヶ岳の主峰赤岳に気付く、すっかり錯覚していた。紅葉の写真を撮っていると、横からガタガタガタと物音、羽音であった、ヤマドリが一羽突然飛び立った、これも静まり返った山中ではびっくり。
  
 コース案内板、左薬師岳方面に入る           林道小武川線を歩き登山口へ

  
  紅葉の斜面越しに地蔵岳のオペリスクが見えた    八ヶ岳遠望

  
  人工林が終わりに近づくと紅葉も残り少なく

 紅葉真っ盛りのカラマツ林を急登して平坦な笹の原に出る、向う稜線が目に入った、多分1750m付近だろう、6:45着。枯れ木にワイヤーロープが巻きつけてあり、この先は葉をほとんど落したダケカンバが見える、どうやらカラマツの人工林はここまでらしい。ダケカンバの樹林帯に入り、八ヶ岳、秩父連峰を見ながら高度を稼ぐ。間もなくシラビソの樹林帯に入り眺望はなくなる。倒木が多くちょっぴり邪魔になる、密生した幼木をみると森が自然回復しているようだ。

 シラビソは高度が上がるに連れて太くなり、歯抜け状態になる。その隙間から、近い山、遠くの山が顔を出す、残念ながら八ヶ岳と秩父連峰以外分からない。また、うっそうとしたシラビソの樹林が続き、御座石という大きな石に出て勾配が若干緩くなる、7:45、高度は2300m付近と思う。再び歯抜けの森となり、樹間に霊峰富士が顔を出す、ここから見る富士山は教科書で見た均整の取れたコニーデ型だ。
  
   急登がここで一時なだらかに               人工林はここまで

  
  秩父連峰を樹間に                     八ヶ岳、赤岳のシンボルもいいなあ

  
  シラビソの樹林帯に入る                倒木もいささか邪魔

  
  八ヶ岳も裾野を広げて・・・                御座石

  
  シラビソも小さな古株となり、ハクサンシャクナゲが樹床に  登山道に広がったナナカマドの落葉

  
            シラビソの古木と富士山、これが似合うんですよ

  
          気をよくして、同じような画像ですが、晴れていればね。

 しばらく富士山を眺めながら、林間を歩く、まるで富士山と一緒に歩いているようで足に力が入る。やがて先方に薬師岳が顔を出す。シラビソからダケカンバに変り、右手の見晴らしの利く岩場に立寄る、高度は2600m付近だろう。曇っているのでくっきりしてないが、水墨画のような富士山が美しい、八ヶ岳、秩父の山並みも素晴らしい。形を歩数とともに変えていく山頂部を右に左に見ながら直下に到着、地図を広げて最高点の位置を確認、右手の岩場に登る、薬師岳2780m山頂着8:50。
  
                 薬師岳の山頂部が現れる、花崗岩の山

  
  山頂直下の岩場から富士山              同、八ヶ岳


   同、秩父連峰


【薬師岳山頂部にて】
 鳳凰三山は周辺の山からは、眺めていたが、歩くのは実に35年ぶりである。それは、忘れもしない5月1日で、残雪期、薬師小屋では小屋を雪から掘りおこしていた。夜叉神から三山越えて広河原に下り、新しい革靴で痛めた足を、靴下2枚履で山靴背負い、長い砕石の林道を歩いて16時間、最後のトンネル付近でタクシーの帰り車に拾われて夜叉神に戻り、精魂つきた山行を思い出す。しかし、五月晴れでその焼きついた絶景は、何十年経とうが消えることはない。今日は、雲多く遠望は利かないが、見入る絶景には変わりない、素晴らしきかな我人生って感じ、オーバーな話かな。

 今回は、その時通り抜けた山頂付近を丁寧に歩きたかった、という目的がある。縦走路の北東に位置する30mほど高い花崗岩を積み上げたような最高点は、5、6mほどある先端の尖った岩で、南東側からは一段深い溝があり登れなかった。東の岩場も面白い、最上部は大仏さんの坐像のようだ。岩場で僅かな水を得て、這い広がることに宿命的なカラマツ、紅葉が富士山を背景に映えている、艶もある、元気である。
  
  薬師岳山頂の岩場                    東の岩場

  
   この岩が一番高い、東側からは登れず        岩越しに観音岳、左が仙丈岳

  
                      また撮っちゃった、富士山とカラマツ

白根三山、右から北岳、間ノ岳、農鳥岳、ずっしり構えた姿は、南アルプスの奥深さだろう。今年も幾万人か眺めたであろう、縦走路の平坦な地、乾ききった砂の台地が歴史を物語っているようだ。ギャーッ、ギャーッ、という元気なホシガラスの声に、ハッと気が付き観音岳へ向う、9:05。

   山頂部から白根三山、右から北岳、間ノ岳、農鳥岳

  
  仙丈岳                          北岳

  
  間ノ岳                            農鳥岳

  
  山頂の標柱と白根三山                  同所から最高部の岩場

  
 向かう観音岳                        ホシガラス

【薬師岳から観音岳へ】
  ★離れていく薬師岳
  

  

  ★近づく観音岳
  

  

 正面に観音岳を、後を振り返り薬師岳を眺めながら、ゆるやかにアップダウンし若干高度を上げる。西に連なる南アルプスの主峰、霊峰富士、八ヶ岳、秩父の峰々も気になる。これで花でも咲いていたら大変なことだ、今残っているのはカラマツの黄葉のみだ、9:43観音岳山頂2840m着。

【観音岳山頂にて】
観音岳は鳳凰三山の最高点だ、ここには三角点がある。最高岩は隣にある幾分傾斜している平坦な花崗岩である。ここまで来ると鳳凰山全体が見通せる。地蔵岳、赤抜沢ノ頭が見え、駒ヶ岳と仙丈岳が並んで見える、遠くは荒川岳も。まるで、このポイントは、山名のカタログになりそうな所だ。澄み切った空の下では、100や200の山頂が見えそうな感じ、裸眼で。ここで、鳳凰小屋で一泊した反対周りの男性に会う、昨日は良く見えていた、と言っていた。まあ、これだけ見えれば、混乱しない範囲で、宿題がなく良いのでは、10:00地蔵だけに向う。
  
  観音岳山頂                       三角点と最高点の岩

  
  向かう赤抜沢ノ頭、地蔵岳と後ろは駒ヶ岳      地蔵岳アップ

  
  最高点の岩上から薬師岳、富士山遠望         八ヶ岳遠望

  
  赤抜沢ノ頭と後ろは駒ヶ岳             赤抜沢ノ頭と後ろは駒ヶ岳、仙丈岳(左の山塊)

  
  農鳥岳左に悪沢岳(左)、荒川中岳(右)遠望      仙丈岳左に中央アルプス空木岳以南遠望


【観音岳山頂から鳳凰小屋分岐点へ】
  ★近づく地蔵岳
何といっても、ここまで来ると気になるのは地蔵岳のオベリスクだ。鳳凰三山を語るのに、標高では観音岳、山容では地蔵岳だろう。それが、目の前に現れ、一歩一歩近づいていることだ。360度見回しながら歩いているが、ついオベリスクに目が。可愛そうなのは隣のピーク、赤抜沢ノ頭2750mで14mしか差はない。北アルプスの槍ケ岳と一緒で、人間の目は分かりやすい一点を見つめる癖があるから、山頂の明白な突起型、デルタ型は認識してもらえる。岩稜から見るオベリスク、ダケカンバ、カラマツの樹間に見るオベリスク、どちらもいいものだ、10:17鳳凰小屋分岐点着。
  

  

  

  

  

  ★離れていく観音岳
  

  

  


【鳳凰小屋分岐点付近で】
★カラマツのオブジェ
  
   根を保護するために石積みされている、右は鳳凰に似ていませんか

  

  
  白根三山                          北岳アップ、中央が大樺沢

 分岐点付近は通り抜ける風が一段と強いのだろうか、水分が少ないのかな、カラマツのオブジェをアチコチに見た。幾度となく力尽き、降り注ぐ雨で生気を取り戻し、厳冬と強風に耐え忍び、この格好となったのだろうか。行き交う人たちに何かを語りかけているような、これも鳳凰の象徴か。


【鳳凰小屋分岐点付近から赤抜沢ノ頭
 近づくオベリスクにいささか緊張、ドラマでいえばクライマックスが目の前にきている。どうした地質の変化があのような形でオベリスク残したのか、今も進行形で崩壊が進んでいるのだろうか、見た感じでは賽の河原付近は明らかに砂礫が崩れているようだ、らしき箇所も見える、10:58赤抜沢ノ頭着。
  

  

  
  地蔵岳分岐、正面の岩が赤抜沢ノ頭の最高点     同所から、地蔵岳、左に八ヶ岳、右に秩父連峰遠望

  
  最高点の岩                      同上から、観音岳

 縦走路を進み最高点の岩に近寄る。3m弱あるが、ズングリしていて登っている感じ、引っ掛かるように岩肌がいぐられている。ヨーシ、やってみるか、一歩、二歩・・、簡単に登ってしまった。記念に岩の先端を入れて観音岳を撮る。

【赤抜沢ノ頭から地蔵岳、オペリスク】
 
ハイマツの間の深くいぐれた道を下り、地蔵岳の賽の河原に下りる、50mほど下ったようだ、11:10。ここからオベリスクの天辺まで、65mほどになる。今回は、行ける所まで行くことにして、カメラ以外置いて歩き出した、人影はなし。色々な顔、沢山のお地蔵さんの立ち並ぶ姿を見ると、中に子供のおもちゃが袋に入って供えてある。これは、いったい? 想像するに、ここには我が子を亡くす、あるいは・・・・、悲しい出来事があったのでしょう。そして、この鳳凰山のオベリスクが天国に一番近い、・・・・・・、となった想いでしょう、合掌。

 砂礫の上を歩き、角のとれた岩の間を進む、みるみる賽の河原が小さく見える、真正面から天辺の大岩に近づくが、ちょっと登れそうもない。西北にまわり、大岩の間をくぐり抜けると、ザイルが手元にあった。あと4,5mかな、5,6mかな、3歩ほど登って見たが、大した事はなさそうだ。ザイルのある面は75度位に傾き、岩がV字になっているので、ロープが振られる心配がない。しかし、ザイルから首を出した所で、どうなるか、やってみればわかることであるが、今回はこれまでとし、引き返す。
 このオベリスクからの眺め、賽の河原、観音岳と富士山、駒ヶ岳と仙丈岳、赤抜沢ノ頭から駒ケ岳への縦走路、今回の山行の締めくくりとしてふさわしいものだった。逆コースをとっていたら、それはそれなりに楽しみもあったろうが、今回はこれで良かった、11:43地蔵岳をあとにする。
  
                    深い谷を隔てた駒ケ岳の雄姿

  
賽の河原、地蔵岳シンボルのオペリスク(地蔵仏)     地蔵さんと駒ケ岳

  
オペリスク中間から観音岳と富士山遠望   同所から駒ヶ岳、仙丈岳(左の山塊)と中央は赤抜沢ノ頭から駒ケ岳への縦走路

  
  同所から観音岳                     同所から賽の河原を見下ろす

  
                       シンボルの大岩直下

  
  西北にまわれば、直下に石仏点々と         大岩の間をくぐり

  
  ザイルへ                         ここから駒ケ岳を取る

  
  賽の河原へ戻る                      山頂の標柱

【地蔵岳から鳳凰小屋、ドンドコ沢、青木鉱泉まで】
 ★見納めの地蔵岳と観音岳
  

  

 ★奇岩と紅葉をを見上げながら、砂礫の道を下って鳳凰小屋へ。
  

  

 ★鳳凰小屋を12:03通過、小屋のオヤジさんが、お客が少ないとぼやいていた。ここから河原を歩き、森の中を歩き、岩石と根っ子の障害物を交しながら急坂を下る。五色滝、白糸滝、鳳凰の滝、南精進ケ滝で各小休止
  

  

  

 ★五色滝、12:32


 ★白糸滝


  

 ★鳳凰の滝、13:30


 ★南精進ケ滝、14:00


 ★紅葉も緑が残っている、青木鉱泉はもう近い
  

  

 ★堰堤を2,3右手に見て緩やかになると出発点の案内板の所に出る
  
    ドンドコ登山道                      薬師は左、ドンドコは右の案内板

 急坂の最後は川沿いコースを歩き、ポツポツと雨が降り出したところで、青木鉱泉に着いて本日の山行を終えた、15:05着。総所要時間は、10時間25分と意外にうまいこといった。下りは、右回り、左回りどちらをとっても、急坂で大変でしょうね。天気もまあまあだったし、いい景色も見えたし、予定通り回れたし、上々であったと思う。鳳凰三山、いい山だ、また歩こう。


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